映画の格闘シーンは、ときに本気で緊張する。
強くて憎たらしい敵。一瞬も油断できない空気。物語の中では、命がけの世界が展開している。
ジャッキーチェンの映画がまさにそうだ。
ところがエンドロールで流れるNG集では、その緊張が一気にほどける。
パンチが外れて椅子を殴ってしまい、「いてて…」と苦笑する。
さっきまで恐ろしかった敵役の俳優も、みんなで笑っている。
その瞬間、ふっと力が抜ける。
「ああ、みんな人間なんだな」と。
本編で感じていた緊張や恐怖が、裏側の笑いによってやさしく解体される。
この“ギャップ”が、妙に心地いい。
おそらく私たちは、物語に入り込みすぎて、無意識のうちにその世界を本気で受け取っている。
だからこそ、裏側を見たときに現実へ戻される感覚がある。
強そうに見えた敵も、完璧に見えたヒーローも、ただの人間だった。
そしてそれが、どこか安心につながる。
もしかすると現実でも同じかもしれない。
職場の緊張、対立、うまくいかない出来事。
それらもまた、物語の一場面にすぎないのかもしれない。
少し視点を引いてみると、そこにもどこか“NG集”的な瞬間がある。
真剣な場面の裏にある、人間らしさ。
それを思い出せると、世界はほんの少し、やわらかくなる。
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